アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本矯正歯科学会から出ている
「 矯正歯科診療のガイドライン」 を読んで勉強しています。
ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。
上顎前突症患者は、歯の外傷の危険性が高いか?
上顎前突は歯の外傷の危険性が高い。上顎前突の臨床的な決め方として高橋の分類によってオーバージェッ トが 7~8mm以上あるものと規定していたが、それ以下であっても咬合や側貌の観察によって上顎前突感があり、他の分類に入れにくいものも臨床的に上顎前突として取り扱われている。いずれにしてもオーバージェットとの関連は大きく、その大きなオーバージェットを正常範囲に減少させることは上顎前突を治療する共通 認識であるが、その意義について考える必要がある。
上顎前突に限らず不正咬合による障害は、齲蝕発生、歯周疾患の誘因、歯の外傷および歯根吸収の誘因、咀機能障害、筋機能障害、骨の発育障害および発音障害などがあげられるが、疼痛や肉体的な違和感を伴うこ とが少ないため、患者はこれらの機能的な障害を自覚していないことが多い。 上顎前突は歯の外傷の誘発が、他の不正咬合に比べて最も高い。大きいオ ーバージェットの不正咬合は、それ以下の患者に比べ約 2 倍の外傷リスクがある。すなわち、オーバージェットの大きい上顎前突のままであるとそのリスクは 2 倍高い状態であり、もち
ろん偶発的因子(環境や行動等)も外傷歯の原因として関連しており、それらの相互的作用によるかもしれな いが、治療におけるオーバージェットの減少は大きく有益であると考えられる。
一方、上顎前突と発音障害の関連、オーバージェットと口唇癖との関連、などについては、これを直接的に評価する高いエビデンスの論文は現時点では残念ながら見当たらないが、上顎前突を治療しないとどうなるか、
というクリニカル・クエスチョンに対しては重要な分野であるため、今後の研究成果が期待される部分である。