アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本歯周病学会から発表されている
「 歯周病の検査・診断・治療計画の指針 」 を勉強しています。
ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。
従来の歯周基本治療では,重度進行性の歯周炎に対して,治療効果が限られたものであることが示されている.
一方,経口抗菌療法が従来の治療法と併用されているが,その治療効果 については,
必ずしも一致した結論が得られていない.
2004 年までのシステマティックレ ビューやコンセンサスレポートによれば,歯周治療における経口抗菌療法は,
特に侵襲性歯周 炎や重度慢性歯周炎患者の深いポケット(PD 6 mm 以上)に対して
臨床的改善効果が期待できることが示されてきた2~4).
しかしながら,経口抗菌療法を歯周治療に応用する際の疑問として以下の点が指摘されている5).
1 どのような患者に経口抗菌療法を行うべきか?
2 どのような抗菌薬あるいはその組み合わせが有効か?
3 適切な抗菌薬の投与量,投与期間,投与時期について
4 誤った薬剤の使用による治療反応性の低下について
5 抗菌薬投与の副作用や耐性菌の増加について である.
ここでは,歯周基本治療における経口抗菌療法の適応症と適応時期および臨床的効果 を中心に,
2007 年までに報告されているランダム化比較試験を主とした臨床研究報告と
システ マティックレビューにコンセンサスレポートや総説を加えて,上記の疑問に関する見解を示す
経口抗菌療法の適応症と期待される臨床的効果 従来の歯周基本治療で反応性が良好な歯周炎に対しては,
経口抗菌療法の付加的臨床効果は あまり期待できない.
一方,治療反応性(深いポケットにおける PD 減少効果,部位率の減少 効果,プロービング時の出血の減少効果など)が
不良な重度広汎型の歯周炎症例(歯周病原細 菌の感染を伴う深いポケットの部位率が
20~30%以上の慢性および侵襲性歯周炎患者)および 喫煙,血糖コントロール不良,
冠動脈疾患を有する中等度から重度歯周炎患者に対する細菌検 査に基づいた経口抗菌療法の応用は,
臨床的に有意な改善効果が認められている.
期待される治療効果は,深いポケットの 1 mm 程度の付加的減少やその部位率の 20~30%程度の付加
経口抗菌療法の EBM(evidence-based medicine)
臨床質問:歯周基本治療において経口抗菌療法は臨床的に有効か?
歯周病原細菌の感染を伴う重度広汎型歯周炎患者の深いポケットに対して従来の歯周基本治療
(プラークコントロール,スケーリング,ルートプレーニング)に加えて,
経口抗菌療法(テトラサイクイン系,マクロライド系,ペニシリン系)を併用することにより,
臨床的 および細菌学的に付加的な改善効果が期待できる.
このことから,歯周基本治療において従来の治療法に加えて感染の診断に基づいて経口抗菌療 法を用いることが検討されるべきである.
歯周基本治療
的減少および細菌学的効果の持続などである.
最近のランダム化比較試験研究では,広汎 型侵襲性歯周炎患者を対象とした経口抗菌療法の有効性が評価されているが,
侵襲性歯 周炎と慢性歯周炎での臨床的効果の差異を示した報告はなく,
病態による診断分類が経口抗菌 療法の選択基準とはならない.
広汎型重度歯周炎,従来の治療法に対する治療反応性不良 部位を多く有する症例に対しては,
経口抗菌療法の有効性が示唆されている.
喫煙患者に対しては,抗菌療法を併用することにより,
非喫煙患者および禁煙患者と同程度の臨床および 細菌学的効果が期待できる.
血糖コントロールが不良な糖尿病患者に対しては,抗菌療法の 併用が血糖コントロールの改善に有効と考えられているが,
従来の治療法と比較して有意な差 異は認められていない.
また,重度歯周炎患者に対して,抗菌療法を併用することにより全身 的炎症状態が改善し,
冠動脈疾患の発症リスクを低下させる可能性が報告されている