アクアデンタルクリニック院長の高田です。
今日は 日本歯科麻酔学会から発表されている
「歯科治療中の血管迷走神経反射に対する 処置ガイドライン 」 を勉強しています。
ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。
治療前の血圧・脈拍測定で反射発現を予測することは難しい?
反射発現前には頻脈になるとの報告がある 。また、処置前の収縮期血圧が
100mmHg 未満、拡張期血圧が 70mmHg 未満で反射発現のリスクが低かったとの報告もある。
しかし、歯科治療中のどの処置が反射発現の引き金となるか一概にはいえないため治療前の血圧・脈拍測定で予測することは難しい。
ただ、反射発現の状態把握、迅速 に対処するためには持続的な血圧・脈拍測定は有効である.
血管迷走神経反射は様々なことが原因で発症する。
反射発現前には頻脈になるとの報告があるが、例えば歯科治療中における局所麻酔施行後、患者は注射による痛みと局所麻酔薬内に含まれる血管収縮薬により血圧と脈拍の上昇がみられる。
しかし、その後全ての患者が反射を発現するわけではない。
また、血圧においても処置前の血圧が低い方が反射発現の高血圧症を有する患者はもともとの血圧が高くどこに基準を設けたらいいか不明瞭である。以前にも反射発現の既往があること、治療当日の体調、年齢、性別など様々な因子を考慮する必要がある。さらに歯科治療中患者の状態は刻々と変化しどの処置が反射発現の引き金になるか一概にいうことができない。そのため治療前の血圧・
脈拍測定のみで反射発現を予測することは難しい。
しかし、治療前より血圧・脈拍などのバイタルサインを持続的に測定することは血管迷走神
経反射などの偶発症を速やかに発見し対処することができるため重要と思われる.
亜酸化窒素(笑気)吸入鎮静法、静脈内鎮静法は反射予防に有効か?
亜酸化窒素(笑気)吸入鎮静法は反射抑制のための一手段となる可能性が示唆される。
静脈内鎮静法は、静脈路確保時に反射が惹起される可能性があり術前指示も含め 適切な配慮が必要となる .
岡山県 岡山市北区 今保 久米 中山道 延友 白石 花尻 北長瀬 西バイパス近く
鎮静法は精神的および身体的ストレスを和らげることを目的に歯科治療と併用して行われ
るが、静脈内鎮静法では静脈路確保時の針の刺入または抜去時の痛みにより反射を生じる
可能性がある。
その点においては、亜酸化窒素(笑気)吸入鎮静法を施行するにあたっては,
鎮静時に痛みを伴うことがないため有用性は高いと言えるが、
どちらの鎮静法においても鎮静深度が適切でないと反射予防の有効性はないため注意が必要である。
特に静脈内鎮静法では使用する薬剤がミダゾラムのみ、プロポフォールのみ、
ミダゾラムとプロポフォールの併用など様々であり、それにより鎮静深度の維持の方法も変わってくる。
また、反射発症のリスク因子として疲労や空腹なども報告されており、鎮静法を行う前の禁食禁水を含め
た術前指示にも十分な配慮が必要である。
生体監視モニタで他の病態と鑑別診断がある程度可能である?
血管迷走神経反射時には、生体監視モニタにより血圧低下および副交感神経緊張に伴う
急激な心拍数の減少が確認できる。
また心電図による不整脈の種類から血管迷 走神経反射と心原性疾患との鑑別が可能となる.
心電図は特に血管迷走神経反射と心原性疾患との鑑別に有効である。血管迷走神経反射では副交感神経の緊張が高まったことによる洞性徐脈となる。
まれにアナフィラキシーショック時に副交感神経緊張に伴う循環抑制から徐脈をきたすこがある。蕁麻疹等の皮膚症状が認められれば、血管迷走神経反射は否定されアナフィラキシーとなる。
モニタのみではなく他の併発症状も確認する必要がある。
痛みを伴う処置で反射は起きやすいか?
採血時に血管迷走神経反射を生じた患者で血中のノルアドレナリン濃度が減少し、交感神 経活動が減少している 。
その際、血中アドレナリン濃度の減少を認めず、
結果としてβ2 効果が優位となって血管拡張を惹起し全身血管末梢血管抵抗の減少によって血圧低下を助長する.
本に関連する知見の多くが口腔顔面領域への疼痛刺激が血管迷走神経反射を惹起することを前提としている。
口腔顔面領域への何らかの侵害刺激は必ず三叉神経によって中枢へ伝播されるので、反射が起きる素因となることは自明であり、痛みを伴う処置は反射を誘発しやすいと認識すべきである。
血管迷走神経反射には個人差はあるが、そもそも健康成人誰にも備わっている神経経路である。
また、口腔顔面領域への疼痛刺激が血管迷走神経反射を惹起する誘因として、年齢や性差に加え、自律神経機能失調や低酸素血症、高炭酸血症、低血糖、痛みを伴う処置時の体位など
が挙げられる。