歯周病は誤嚥性肺炎のリスクファクターであると考えられる

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
今日は 日本歯周病学会から発表されているガイドライン

「歯周病の検査・診断・治療計画の指針」 を勉強しています。

ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。

・高齢者では口腔内細菌が関与する誤嚥性肺炎などの呼吸器疾患
(respiratory disease)のリスクが高まるか?

肺炎発症患者の大部分は高齢者であり,一般に加齢そのものは誤嚥性肺炎のリ
スクファクターであると考えられる。しかし,条件を口腔内細菌が関与する呼
吸器疾患へのリスクと限定するとその限りではない。口腔内細菌に起因する誤
嚥性肺炎と加齢との関係を調査した研究は非常に少なく,本項で確認された文
献は2編のみである。
そのうち,1編は加齢がリスクとなる結論を示しているが,口腔ケアの介入の
みで細菌学的評価は行われていない。もう1編は逆に否定的な結果となってい
る。そのため,上記 CQを判断するには,現時点ではエビデンスが不足してい
ると判断される。

加齢が誤嚥性肺炎のリスクとなるかを考察するため,年齢(agedまたはelderly)のキー
ワードを中心に文献検索を行った。一般的に加齢変化は誤嚥性肺炎のリスクになると考えら
れる。しかし上記のように,口腔内細菌が関与する誤嚥性肺炎という
条件に絞ると,本項のCQを満たす論文は少なかった。
文献1では,口腔ケア介入の有無を暴露要因として行った後向きコホート研究の結果か
ら,加齢が誤嚥性肺炎による死亡のリスクファクターになること,また口腔ケアは肺炎によ
る死亡リスクとしての年齢の影響を低下させることを報告している。著者らは,口腔ケア
(−)群では加齢が誤嚥性肺炎による死亡の有意なリスクファクターとなったのに対して,
口腔ケア(+)群では有意な結果が得られなかったため,口腔ケア介入は年齢を含むいくつ
かのリスクファクターに影響していると説明している。また,文献1では細菌学的評価は
行っていないものの,口腔ケアにより口腔内細菌数を減少させたことが誤嚥性肺炎のリスク
軽減につながったとも考えられる。
対照的に文献2では,年齢が誤嚥性肺炎のリスクファクターになるとはいえない,という
結果を示している。この結果は,「加齢変化は誤嚥性肺炎のリスクになる」という通説に反
する内容であると思われるが,文献1に比較すると,文献2では肺炎の発症率をエンドポイ46ントにしているということ,被験者の年齢層が平均10歳程度高いため80〜90歳前後が対象になっているなど,加齢による肺炎発症への影響が強く現れなかった可能性も考えられる。
いずれにせよ,加齢には生活機能低下や嚥下障害など口腔衛生と誤嚥にかかわる複雑な因子が関与するため,他のリスクファクターとの交絡因子として影響が観察されることも十分に推察できる。加齢や年齢に限らず,誤嚥性肺炎のリスク因子を網羅的に解析した研究はあまりみられないのが現状であるため,今後の更なるエビデンスの蓄積が望まれる

・口腔ケア(口腔衛生管理)によって呼吸器疾患のリスクが低下する
か?

口腔ケア(狭義のもので,口腔衛生管理に絞る;直接的な歯周病治療ではない)
は呼吸器疾患の発症を抑制する。しかし,確固たるエビデンスはない。

口腔ケアと誤嚥性肺炎の関係に関する臨床研究では,口腔衛生管理状態を示す指標が曖昧である。そのために,口腔ケアを実施したことに対して,嚥下や咳反射,さらには肺炎の発症を関連づけていることになり,口腔ケアの結果として何が(誤嚥性)肺炎の発症に影響を与えたかがわかりにくい。口腔の細菌量や細菌叢を変化させるだけではなく,咳反射を含む生体の反応・機能へ影響を与えていることも考えられる。そのため,口腔ケアは,細菌学的にも,生理学的にも影響を及ぼしていると考える必要がある。そこに歯周治療を組み込むと,もっと長期間の観察が必要となると考える。
一方で,口腔ケアとVAPとの関連に関するメタアナリシスは数件あったが,コクランライブラリーにあるものでは,ICUの成人患者のVAP発症を40%減少させるとしているが,肺炎死やICU期間への影響は明確ではないと結論づけている。

岡山県 岡山市北区 今保 久米 中山道 延友 白石 花尻 北長瀬 西バイパス近く