歯周病患者における抗菌療法の診療

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
今日は 日本歯周病学会から発表されているガイドライン

「歯周病患者における抗菌療法の診療ガイドライン」 を勉強しています。

ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。

細菌感染に対する治療の実際
1.機械的な歯肉縁上プラークコントロール: プラークコントロール,スケーリング

2,機械的な歯肉縁下プラークコントロール:スケーリング・ルートプレーニング

3,洗口剤による歯肉縁上プラークコントロール

4,抗菌療法による歯肉縁下プラークコントロール
ポケット内洗浄と LDDS:局所薬物配送システム
経口抗菌療法

プラークコントロール,スケーリング
口腔清掃は,患者らが歯ブラシで行うブラッシングが主体となるが,
歯周病の重症度,治療時期,患者の技量や生活習慣に合わせて歯間ブラシ,
デンタルフロスなどの歯間清掃用具や電動(回転,音波,超音波)歯ブラシの使用も必要である.

さらに医療従事者によるスケーリングによって患者の不十分なプラークコントロールを補うとともに,患者のモチベーションを高め維持する効果が期待できる.

また,歯肉縁上プラークコントロールの障害となる不適合修復・補綴物の調整や除去,歯冠の形態修正を必要に応じて行う.4 mm 以上の歯周ポケットに
対しては,歯肉縁下のプラークコントロールを併用する.なお,歯肉縁上プラークコントロールは,歯肉縁下処置の効果を持続させるうえで必要不可欠である.

スケーリング・ルートプレーニング
歯周ポケットに対する非外科的処置として,手用スケーラーを用いたスケーリング・ルートプレーニングがあり,軽度から中等度歯周炎に対する標準的治療手段となっている.

単根歯や根面形態,骨欠損形態が複雑でない症例では,必須の治療法である.

また,進行した根分岐部病変や複雑なあるいは深い骨縁下ポケットでは,外科治療の前処置として用いられる.

スケーリング・ルートプレーニングは,3 mm 以下のポケットに対して行うとアタッチメントロスを生じる危険性があるので注意深く行う.
また,ポケットが深くなるほど歯肉縁下プラークや歯石の除去が困難となる.
5~7 mm の歯周ポケットに対するポケット減少量は,約 1~2 mm で,
アタッチメントゲインは,約 0.5~1 mm と報告されている.
超音波(音波)スケーラーは,手用スケーラーを用いた場合と比較して歯石の除去効果に差異はなく,
治療時間の短縮化がはかられる.

洗口剤による歯肉縁上プラークコントロール
使用する洗口剤としては,プラーク形成抑制作用や薬剤の歯面への沈着作用を有する低濃度のクロルへキシジン溶液の使用が効果的である.
そのほか,フェノール化合物,ポビドンヨード,塩化セチルピリジニウム,
エッセンシャルオイルなどがある.
歯周基本治療における使用としては,スケーリング後の
歯周病原細菌の再増殖期間とされる 2~4 週間の継続的使用が
有効である.

岡山県 岡山市北区 今保 久米 中山道 延友 白石 花尻 北長瀬 西バイパス近く

抗菌療法による歯肉縁下プラークコントロール
(1)局所抗菌薬による歯肉縁下プラークコントロール
(ポケット内洗浄と LDDS:局所薬物配送システム)
薬剤による歯肉縁下プラークコントロールとしては,1 ポケット内洗浄法と2 ポケット内抗菌薬投与法がある.
ポケット内洗浄法に使用可能な薬剤としては,ポピドンヨード,塩化ベンゼトニウム,オキシドール,アクリノールなどがある.
また,ポケット内に投与する薬剤としては,テトラサイクリン系抗菌薬徐放性軟膏,ヒノキチオール軟膏などがある.
局所薬物療法に関して留意すべき点としては,
歯肉縁上プラークコントロールがなされていること,
機械的なプラークコントロールを優先して行うこと,
スケーリング・ルートプレーニングに対して反応性が良好な部位や慢性歯周炎の多くの場合では,局所抗菌療法が必ずしも必要ではないことがあげられる.

(2)経口抗菌療法
重度の広汎型歯周炎症例(重度広汎型慢性歯周炎,広汎型侵襲性歯周炎)や全身疾患関連歯
周炎に罹患した中等度から重度歯周炎症例に対しては,機械的な歯肉縁上および縁下プラーク
コントロールと併用することが推奨される.
テトラサイクリン系抗菌薬やマクロライド系抗菌薬が使用されることが多い.
経口抗菌療法は,細菌検査により投与薬剤の選択や治療効果をモニタリングすることが
耐性菌対策のうえからも望ましい.
実施に際しては,患者の全身状態や服薬状況を十分に把握し,
患者とのインフォームドコンセントを得る必要がある.

また,必要に応じて医科との連携をはかるとともに,アレルギーなどの副作用に対して対応できる態勢を整えておく必要がある.
さらに,治療反応性が不良の場合は,感受性テストを実施する場合もある.

歯周基本治療において経口抗菌療法は臨床的に有効か?

歯周病原細菌の感染を伴う重度広汎型歯周炎患者の深いポケットに対して従来の歯周基本治療(プラークコントロール,スケーリング,ルートプレーニング)に加えて,経口抗菌療法(テトラサイクイン系,マクロライド系,ペニシリン系)を併用することにより,臨床的および細菌学的に付加的な改善効果が期待できる.
このことから,歯周基本治療において従来の治療法に加えて感染の診断に基づいて経口抗菌療法を用いることが検討されるべきである.

背景,目的
従来の歯周基本治療では,重度進行性の歯周炎に対して,治療効果が限られたものであることが示されている.
一方,経口抗菌療法が従来の治療法と併用されているが,その治療効果については,必ずしも一致した結論が得られていない.
2004 年までのシステマティックレビューやコンセンサスレポートによれば,
歯周治療における経口抗菌療法は,特に侵襲性歯周炎や
重度慢性歯周炎患者の深いポケット(PD 6 mm 以上)に対して臨床的改善効果が期待できることが示されてきた.

しかしながら,経口抗菌療法を歯周治療に応用する際の疑問とし
て以下の点が指摘されている5).
1 どのような患者に経口抗菌療法を行うべきか?
2 どのような抗菌薬あるいはその組み合わせが有効か?
3 適切な抗菌薬の投与量,投与期間,投与時期について
4 誤った薬剤の使用による治療反応性の低下について
5 抗菌薬投与の副作用や耐性菌の増加について

である.
ここでは,歯周基本治療における経口抗菌療法の適応症と適応時期および臨床的効果を中心に,2007 年までに報告されているランダム化比較試験を主とした臨床研究報告とシステマティックレビューにコンセンサスレポートや総説を加えて,上記の疑問に関する見解を示す.

⑴経口抗菌療法の適応症と期待される臨床的効果
従来の歯周基本治療で反応性が良好な歯周炎に対しては,経口抗菌療法の付加的臨床効果はあまり期待できない.
一方,治療反応性(深いポケットにおける PD 減少効果,部位率の減少効果,
プロービング時の出血の減少効果など)が不良な重度広汎型の歯周炎症例(歯周病原細菌の感染を伴う深いポケットの部位率が 20~30%以上の慢性および侵襲性歯周炎患者)および
喫煙,血糖コントロール不良,冠動脈疾患を有する中等度から重度歯周炎患者に対する細菌検
査に基づいた経口抗菌療法の応用は,臨床的に有意な改善効果が認められている.

期待される治療効果は,深いポケットの 1 mm 程度の付加的減少やその部位率の 20~30%程度の付加
経口抗菌療法の EBM(evidence-based medicine)

臨床質問:歯周基本治療において経口抗菌療法は臨床的に有効か?

歯周病原細菌の感染を伴う重度広汎型歯周炎患者の深いポケットに対して従来の歯周基本治療(プラークコントロール,スケーリング,ルートプレーニング)に加えて,経口抗菌療
法(テトラサイクイン系,マクロライド系,ペニシリン系)を併用することにより,臨床的および細菌学的に付加的な改善効果が期待できる(エビデンスレベル 2*,推奨度 B**).このことから,歯周基本治療において従来の治療法に加えて感染の診断に基づいて経口抗菌療
法を用いることが検討されるべきである.

⑵.歯周基本治療
的減少および細菌学的効果の持続などである.最近のランダム化比較試験研究では,広汎型侵襲性歯周炎患者を対象とした経口抗菌療法の有効性が評価されているが,侵襲性歯周炎と慢性歯周炎での臨床的効果の差異を示した報告はなく,病態による診断分類が経口抗菌療法の選択基準とはならない.
広汎型重度歯周炎,従来の治療法に対する治療反応性不良部位を多く有する症例に対しては,経口抗菌療法の有効性が示唆されている.
喫煙患者に対しては,抗菌療法を併用することにより,非喫煙患者および禁煙患者と同程度の臨床および細菌学的効果が期待できる.
血糖コントロールが不良な糖尿病患者に対しては,抗菌療法の
併用が血糖コントロールの改善に有効と考えられているが,
従来の治療法と比較して有意な差
異は認められていない.

また,重度歯周炎患者に対して,抗菌療法を併用することにより全身
的炎症状態が改善し,冠動脈疾患の発症リスクを低下させる可能性が報告されている.