歯周組織破壊の検査項目

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
今日は 日本歯周病学会から発表されているガイドライン

「歯周病の検査・診断・治療計画の指針2008」 を勉強しています。

ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。

☆炎症の検査項目☆

・歯周病原細菌検査

定 義:
歯肉縁下プラークや刺激唾液から歯周病原細菌〈歯周炎を発症・進行させる細菌;
Porphyromonas gingivalis,Tannerella forsythia( forsythensis),
Prevotella intermedia, Treponema denticola,
Aggregatibacter(Actinobacillus)actinomycetemcomitans, Eikenella corrodens〉を検出する検査.

方 法:
歯肉縁下プラークをペーパーポイントで採取し,
検査機関に依頼して病原細菌核酸 (DNA)定量法などにより細菌数を測定する.

また,数部位から採取した縁下プラー クを混合させたり,
ガムを 5 分間かむことによる刺激唾液から病原細菌量を測定する方法もある.

さらに,歯科医院内で使用可能な,酵素法による定性細菌検査法もある.

意 義:
歯周病原細菌の存在は,歯周炎の発症・進行におけるリスクを
増加させることが実証されている.

また,歯周基本治療における薬物治療(経口投与,ポケット内投与) の選択基準,
歯周外科治療の必要性,治癒の判定を決定する際の重要項目の一つである.

・歯周病原細菌に対する抗体価検査

定 義:
歯周病原細菌に対する血清中の IgG 抗体価を測定する.

方 法:
肘正中静脈より血液を採取して,血清を遠心分離する.

通常,病原細菌抗原(膜抗原, 線毛,莢膜,リポ多糖体)を使用して
酵素免疫測定(ELISA)法で測定する.

また, 指先を穿刺して血液を採取する指尖血検査法もある.

意 義:
歯周病原細菌に対する血清抗体価の上昇は,かつて細菌感染が生じていた,
あるいは測定時も感染が生じていることを示している

細菌に対する血清 IgG 抗体価は終生 免疫ではなく時期により変化するため,
歯周治療に伴い歯周病原細菌が歯周ポケット 内より減少することにより
一般的には IgG 抗体価も減少する.血清 IgG 抗体価が高 いことは,
ポケット内の歯周病原細菌が全身に対しても影響を及ぼしていると考えら れている.

・プロービング時の出血

定 義:
歯周プローブをポケットに軽圧(25 g 前後)で挿入した直後にみられる,

おもにポケッ ト底部からの出血があること.

方 法:
プロービングポケットデプスを測定する際に,各部位ごとに出血の有無を測定する.

通常,1 歯 4~6 カ所( J側近心・中央・遠心,舌側近心・中央・遠心)を測定する.

出血状態により,+(点状),++(線状,滴状)に分ける場合もある.

意 義:
炎症がポケット内壁にある場合,周囲の上皮組織や結合組織が破壊されているため,
プロービングにより容易に毛細血管が損傷して,出血する.

プロービング時の出血が ある部位は,ポケット内壁に炎症が存在することを意味し,
歯周炎が進行する確率 が高い.逆に出血がないときは,病状が安定していることを示す

☆歯周組織破壊の検査項目☆
・プロービングポケットデプス
・アタッチメントレベル
・歯槽骨吸収出度(水平・垂直性骨吸収)
・根分岐部病変

・プロービングポケットデプス
定 義:
歯周プローブをポケットに挿入した際の,歯肉辺縁から
プローブ先端までの距離.歯 肉辺縁からポケット底部までの距離
(組織学的ポケットデプス)に類似した値である が,一致はしない.

方 法:
歯の最深部を代表として記載する 1 点法と,1 歯 4 カ所または 6 カ所
( J側近心・ 中央・遠心,舌側近心・中央・遠心)を測定する方法がある.1 mm 単位で記載する.

意 義:
プロービングポケットデプスは,測定時の歯周ポケットの深さを意味する.

3 mm 以 下が臨床的正常値であり,深いポケットほど嫌気性環境となり,
歯肉縁下プラークお よび歯周病原細菌がより多く存在しやすくなる.

またプロービングポケットデプス の値が大きな部位は歯周組織破壊が進行する可能性が高い.

・アタッチメントレベル
定 義:
歯周プローブをポケットに挿入した際の,
セメント-エナメル境からプローブ先端までの距離.

セメント-エナメル境の代わりに修復補綴物の辺縁など他の基準点を使用する場合もある.

方 法:
通常,プロービングポケットデプス値に歯肉退縮量を合計する.

1 mm 単位で記載す る.

意 義:
アタッチメントレベルは,歯根面に付着している歯周組織の位置を意味し,
過去から 測定時までの付着喪失の結果である.

アタッチメントレベルを治療前後で比較するこ とによりアタッチメントレベルの変化が分かり,
治療効果の指標となる.

治療により アタッチメントが増加した場合はアタッチメントゲインが,
また,歯周病の進行によ りアタッチメントが減少した場合はアタッチメントロスが生じる。

・歯槽骨吸収度:水平・垂直性骨吸収

定 義:
歯槽骨吸収度は,歯根長(セメント-エナメル境から根尖)に対する,吸収した歯槽
骨距離(セメント-エナメル境から歯槽骨頂)の割合である.

両隣在歯のセメント-エナメル境を結んだ仮想線に対して,ほぼ平行な歯槽骨吸収を水平性骨吸収,斜めに向かう歯槽骨吸収を垂直性骨吸収という.

方 法:
デンタルエックス線写真,もしくは骨レベルを判別しうる明瞭なパノラマエックス線写真から歯槽骨吸収度を測定する.
水平性骨吸収か垂直性骨吸収かは,隣接部について判定する.
なお,近年では三次元 CT により立体的に骨の吸収状態も観察できる.

意 義:
歯槽骨吸収度は,歯槽骨の破壊の程度を意味し,過去から測定時までの破壊が集積さ
れた結果である.
垂直性骨吸収は,咬合性外傷あるいは,歯周組織破壊の急速な進行
と関連することが多い.

・根分岐部病変
定 義:
歯周炎や歯髄疾患の病変が,多根歯の根間中隔に波及した状態.おもに上顎の大臼下顎の大臼歯,上顎の小臼歯にみられ,通常 2 根分岐部と 3 根分岐部の病変がある.

方 法:
分岐部プローブや通常の歯周プローブを用いてエックス線写真を参考にしながら,進行度を 3 段階に分ける(Lindhe & Nyman の分類).

1 度:水平貫通するもの.

意 義:
根分岐部病変は,歯周基本治療では治 ∂しにくく,病変の程度により治療法が明確に
異なる.外傷性咬合や歯周-歯内病変の関与の有無も調べる必要がある.

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