上顎前突について

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本矯正歯科学会から出ている
「 矯正歯科診療のガイドライン」 を読んで勉強しています。
ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。

 

上顎前突について

上顎前突(maxillary protrusion)は俗に出っ歯(buck-tooth)と表現されるように、一般的には上顎前歯が下 顎前歯より著しく前方に突出した咬合異常を総称する。1992 年(平成 4 年)に「文部省 学術用語集 歯学 編(増訂版)」が発刊されて、学術用語として「上顎前突」が収録され、それに対応する英語として「maxillary protrusion」、「prognathia」があげられている 1。2008 年に発刊された日本歯科医学会学術用語集では「上顎前突」 は「maxillary protrusion」、「 prognathia」、「maxillary prognathism」があげられている 。

日本の医学事典においては、上顎前突は「上顎骨変形の一つで側貌において上唇は下唇より著しく突出して 見え、上下歯列の対応関係(咬合)において上顎前歯は下顎前歯より数 mm 以上前方に突出し、しばしば口裂より露出する。上顎骨歯槽突起の前方過剰発育によるものは、上顎前歯の歯軸も水平面に対する傾斜が大であるが、臼歯部の咬合は正常であり、邦人にしばしばみられる型である。まれに、上顎骨体の前方過剰発育に基 づいて起きることがあり、この場合は臼歯部咬合が上顎近心咬合を示す」と記されている 。また、新歯学大辞典においては「上下顎前歯切縁の水平的被蓋距離すなわちオーバージェットが正常より大きい咬合異常の総 称。この中には種々の不正状態が含まれており、多くの人が分類を試みている」とも記されている。

 

新歯学大辞典においては「Angle の不正咬合分類法においては、II 級 1 類および 2 類にこれを含めており、 正常な上顎歯列弓に対して下顎歯列弓が遠心に咬合するものとしているが、I 級でも上顎前歯の唇側転位のあ るものや、下顎前歯の舌側転位のあるものもこれに含まれる」としている 。また、「下顎歯列弓が上顎歯列弓 に対し遠心、あるいは後方の位置関係にあるものを言い、それが第一大臼歯の対向関係に現れている。特に II 級 1 類はオーバーバイト、オーバージェットが大きい I 級と異なり、舌、オトガイ筋、頬筋などの異常筋機能、
代償性筋活動を伴うため、第一大臼歯の近遠心関係、および上下顎基底の前後関係、組織系すべての相互関係 の診査をすることが必要である」と記すものもある 。

一方、咬合異常を分類している中で、高橋の分類では「上顎前突を上下顎前歯の前後的な距離、すなわちオ ーバージェットが 7~8mm 以上あるような不正状態の総称」としている 。同様に骨格系の分類について、骨 格性 pattern では、ANB が 3°を超えて大きい場合に骨格性 II 級とする分類によって、下顎が劣成長もしくは後方に成長しているか、上顎が過成長もしくは前方に成長しているために、下顎が上顎に対して後退位をとると 記している 。