歯科用接着ブリッジの形成

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本補綴歯科学会から発表されている

「 接着ブリッジのガイドライン 」 を勉強しています。

ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。

・支台歯に動揺のある症例に対して,接着ブリッジの適用は推奨されるか?

まず,支台歯に歯根膜面積の顕著な減少がなく,動揺度が 1 度程度までであることを前提とする.
その上で,動揺の原因が一次性の咬合性外傷によるものなのか,歯根膜面積の
減少による二次性の咬合性外傷なのかを判断することが必須である.
支台歯に動揺がみられる場合は動揺がない場合に比較して,接着ブリッジが脱離する確率が高い.

特に,支台歯間に動揺度の差がある場合には適用できない.
しかしながら,ともに類似の動揺度であれば適用できる可能性があり,
その場合,より強固な維持形態を支台歯に付与したり,
ブリッジ自体の剛性をより高める工夫が必要となる.
咬合接触関係の是正が必要な場合は,部分被覆冠や全部被覆冠支台のブリッジの適用が理にかなっており,
また支台歯の動揺自体が歯列全体として問題な場合は部分床義歯やインプラント治療を考慮することとなる.
いずれにしても,患者の好みや価値観を考慮しつつ,治療コストとそれに見合うだけの補綴装置や歯の予知性などの短期的・長期展望に立った上での選択が重要である.

・支台歯形成に際して,エナメル質に限局した形成は推奨されるか?

接着の観点からエナメル質に限局した形成は非常に有利であり,また咬合力に対する
抵抗形態や脱離力に対する維持形態の付与を必要最小限に行う観点からエナメル質内の形成を行うべきである.
実際の臨床では,既に修復がなされている場合も多く,その場合利用可能なエナメル質の量を考慮して,接着ブリッジを選択するのか,歯質の削除量を多くしてでも部分被覆冠や全部被覆冠支台のブリッジを選択する方が有利なのか,
判断する必要がある.
一般に,患者は歯質保全を好む傾向にあり,患者の好みと価値観を十分に考慮することが重要である.

・支台歯形成に際して,グルーブの付与は推奨されるか?

グルーブの付与は支台装置の側方への脱離に対する抵抗を増大させる.
前歯部,臼歯部ともに,審美的な問題が起こらない範囲で欠損側隣接面唇・
頬側隅角部および隣在歯が残存している側の舌・口蓋側の隅角をわずかに超えたところまでを軸面形成し,その先端部分にグルーブを形成する.

ただし,下顎前歯部症例で,支台装置に直接咬合力が負荷されない条件に限っては,グルーブを付与しなくても(付与できなくても)咬合力による影響は少ないと考えられる.
反対に,咬合力の影響を受けやすい部位でのグルーブの付与は極めて重要であり,その場合グルーブ部分に一部象牙質が露出したとしても妥協できると
考えられる.