アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本歯科麻酔学会から発表されている
「歯科治療中の血管迷走神経反射に対する 処置ガイドライン 」 を勉強しています。
ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。
血管迷走神経反射とは?
歯科治療に対する不安・恐怖・極度の緊張などの精神的ストレスが背景にあり、痛み刺激などが与えられ、迷走神経緊張状態となり発症する全身的偶発症を血管迷走神経反射という。
過去には神経原性ショック、疼痛性ショック、デンタル・ショック、脳貧血発作、三叉迷走神経反射など様々な用語でよばれていた。
これらのうち、ショックは「急性循環不全により組織灌流が著明に減少し、
細胞機能が障害を受け、最終的には多臓器不全に陥る」と定義され、
また、脳貧血発作は一時的な脳虚血状態を示すだけであり、いずれも上記に示す病態にあわない。
そこで、本病態は一過性の血圧低下と徐脈の頻度が高いので、
「血管迷走神経反射」という用語を使用する。
なお、(血管)迷走神経反射性失神(vasovagal syncope)という用語が確立されているが、本病態では失神に至らないものも包含していることを付け加える。
適切な局所麻酔を行う処置において最も多く発生し、米国では局所麻酔を行う患者のうち、0.65%に発生したと報告されている。
血管迷走神経反は 年齢・性別により発現頻度に差があるか?
血管迷走神経反射の発症頻度は男性に比べて女性の方が高い(推奨度 C)。また年齢との関連は、若年者でより発症頻度が高い。
献血者のバックグラウンドが被検者 1,055 人の献血者のうち血管迷走神経反射を発症した献血者の中で年齢と性別との関連性が認められた 。
自己血採血室と中央採血室での採血時に血管迷走神経反射を起こした患者を対象とした研究では、中央採血室で有意に若年者が多く、性別では自己血採血室、中央採血室共に女性に血管迷走神経反射の発現頻度が多い傾向があり、血管迷 走神経反射の発生頻度と年齢と性別との関連性が認められた 。
採血時の血管迷走神経反射の発生状況と背景因子を検討した研究では、
血管迷走神経反射 の発症率は 20 歳未満の割合が突出していて、性別では女性のほうが多い傾向にあった 。
血管迷走神経反射の発生と性別・年齢を検討した他の研究では、女性で有意に発症頻度が高 く、高齢者では発症頻度が低い事が認められた 。
また、他施設での供血者の血管迷走神経反射の発生に関する研究では、
年齢は発症頻度と有 意に関連があるが、性別には関連がないと結論している。
他の研究では、若年は成人に比べて血管迷走神経反射の発現が有意に多く、
女性では男性よりも発症頻度が 高い事が報告され 、
年齢が血管迷走神経反射の発生に関連があるが、性別に ついて女性は 2.5 倍の発生率を示すが有意な関連はないと報告している。
歯科治療中の発現頻度に関しての疫学データは無いが、
採血時の血管迷走神経反射の発現に関しては、若年者と女性で発現頻度が高い。
しかし、どのような生理的な機序で血管迷走神経反射の発症頻度に年齢と性別の差が関連しているかは不明である。
歯科治療中に発生した血管迷走神経反射が年齢と性別に関連を示唆する報告もあり、
関連性があるか判断するには充分な症例数を対象とした分析疫学的研究が必要である。