アクアデンタルクリニック院長の高田です。
今日は 日本矯正学会から発表されているガイドライン
「矯正歯科診療のガイドライン 上顎前突編 」 を勉強しています。
ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。
上顎前突の治療の必要性
不正咬合(咬合異常)による影響,障害を、社会心理学的見地、機能的見地からもエビデンスに基づいて明
確にすることは、矯正治療の意義、必要性を考える上で、非常に重要と考える。しかしながら、疼痛や肉体的
な違和感を伴うことが少ないため、患者はこれらの機能的な障害を自覚していないことが多い。また、不正咬
合のひとつである上顎前突にみられる特有の影響、障害だけに限局した高いエビデンスのある論文は
非常に少ないために、上顎前突を含む咬合異常としてその影響、障害を取り扱った。
上顎前突を含む咬合異常は好感度や聡明さなどの社会的領域、自尊心などの心理学的領域に影響を与える可
能性が高い。また、口腔機能への影響については、咀嚼機能に影響を与える可能性が高い。しかし、構音機能、
顎関節症、ブラキシズムと直接的に関連があるとの科学的根拠はない。
さらに、歯周病や齲蝕との関連性について、咬合異常はそれらの発生との直接的原因となる科学的根拠はないが、
二次的な要因として捉えることが できる。
不正咬合(咬合異常)による影響、障害に対して強い科学的根拠はないが、間接的原因として社会心理学、
口腔機能、歯周病や齲蝕の発生に影響を与えていると考えるのが妥当と考える。
しかしながら、重篤な開咬症例における発音障害、咀嚼障害や臼歯部崩壊による低位咬合症例における顎関節障害など
直接的な因果関係が明らかなことがある。
それらの障害を客観的な数値データとして表現し、そして、上顎前突、反対咬合という
単なる不正咬合のカテゴリーだけでその関係性を科学的に証明するのは難しいと考える。
その不正咬合の重篤度や成因、その障害の客観的な評価、患者の生活環境や性格など総合的見地から、
症例毎にその影響、障害を 考えるべきと考える。
さらに、上顎前突に直接関連する障害は限られるが、その中で上顎前突は歯の外傷の誘発が他の不正咬合に比べて高く、
3mm を超える大きなオーバージェットの不正咬合はそれ以下の患者に比べ約 2 倍の外傷リスク
があるとの高いエビデンスが存在する。
他の相互作用も存在するが、その大きなオーバージェットを矯正治療 によって正常範囲に減少させることは有益である。
矯正治療の意義、利益を考えたとき、不正咬合(咬合異常)による影響、障害を明確にして、矯正治療によ
って形態学的改善を獲得するだけでなく、機能的にも、社会心理学的にも改善することを明らかにすることは
矯正治療学の本質であると考える。
・上顎前突を含む咬合異常は社会心理学的に影響を与えるか?
上顎前突を含む咬合異常は社会心理学的に影響を与える可能性が高い。
・上顎前突を含む咬合異常は口腔機能に影響を与えるか?
咬合異常は咀嚼機能に影響を与える可能性は高い。
しかし、構音機能、顎関節症、ブラキシズムと直接的に 関連があるとの強い科学的根拠はない。
不正咬合は咀嚼機能、能率を低下。
正常咬合の咀嚼機能は不正咬合 のそれより優れている。Angle 分類と咀嚼機能では、
Angle III 級だけが明らかに咀嚼能率が減じている。
不正咬合は顎関節症の直接的要因ではない。そして、過大な水平被蓋、過蓋咬 合は影響を与える
・上顎前突を含む咬合異常は歯周病や齲蝕の発生と関連するか?
咬合異常は歯周病や齲蝕の直接的原因となる科学的根拠はない。
咬合性外傷は歯肉炎、歯周炎を惹起しない。咬合は歯周病の進行におけるリスクファクターである。
咬合性外傷が歯周組織破壊のリスクファクターであるというエビデンスはあるものの、
歯周組織破壊の引き金になるというエビデンスはない。
咬合性外傷が プラークに起因する歯肉炎や、歯周組織のアタッチメントロスを誘発することはない。
歯の過度可動性を引き起こしている咬合力は、進行性歯周炎においてアタッチメントロスを加速させ、
歯周疾患治療による治癒を妨げる.
叢生は齲蝕の感受性を上げるものではない
・上顎前突症患者は、歯の外傷の危険性が高いか?
上顎前突は歯の外傷の危険性が高い。
上顎前突の臨床的な決め方として高橋の分類によってオーバージェットが 7~8mm以上あるものと規定していたが、
それ以下であっても咬合や側貌の観察によって上顎前突感があり、
他の分類に入れにくいものも臨床的に上顎前突として取り扱われている。
いずれにしてもオーバージェットとの関連は大きく、
その大きなオーバージェットを正常範囲に減少させることは上顎前突を治療する共通 認識であるが、
その意義について考える必要がある。
岡山県 岡山市北区 今保 久米 中山道 延友 白石 花尻 北長瀬 西バイパス近く
上顎前突に限らず不正咬合による障害は、齲蝕発生、歯周疾患の誘因、歯の外傷および歯根吸収の誘因、
咀嚼機能障害、筋機能障害、骨の発育障害および発音障害などがあげられるが、
疼痛や肉体的な違和感を伴うことが少ないため、患者はこれらの機能的な障害を自覚していないことが多い。
上顎前突は歯の外傷の誘発が、他の不正咬合に比べて最も高い。
大きいオ ーバージェットの不正咬合は、それ以下の患者に比べ約 2 倍の外傷リスクがある。
すなわち、オーバージェットの大きい上顎前突のままであるとそのリスクは 2 倍高い状態であり、
もちろん偶発的因子(環境や行動等)も外傷歯の原因として関連しており、それらの相互的作用によるかもしれないが、
治療におけるオーバージェットの減少は大きく有益であると考えられる。
一方、上顎前突と発音障害の関連、オーバージェットと口唇癖との関連などについては、これを直接的に
評価する高いエビデンスの論文は現時点では残念ながら見当たらないが、上顎前突を治療しないとどうなるか、
というクリニカル・クエスチョンに対しては重要な分野であるため、今後の研究成果が期待される部分である