う蝕と歯周病の治療におけるメインテナンスの根拠

アクアデンタルクリニック院長の高田です。

予防・メンテナンスの資料を読んでいます。

 

近年では日本でもメンテナンスを行っている歯科医院が珍しくなくなってきた。歯周病に関しては40年以上前の教科書に すでにメンテナンスが1章を割いて解読されているし 現在ではSPTという用語も日常的に用いられるようになっている。一方、う蝕においては これまでの代表的な教科書でメインテナンスの概念について述べたものではなかったが、2009年に疾患を持続的に管理していくためのモデルを提唱した。

日本では先進的な開業歯科医師たちが 訳40年前から歯周炎のメインテナンスを開始し その流れの中で約25年前から う蝕の積極的な管理を行い始めた。

しかしながら、メインテナンスの成果が多くの症例や臨床データの分析をもとに語られるのに対して なぜメインテナンスが必要なのかという考察はあまりなされてこなかったと感じている。古いテキストでは プラークが病因であり、日常的に歯に付着するから といった説明がなされている。最近では それに加えてリスク要因についても言及されるようになってきている。

う蝕 歯周病の発症にある種の細菌が関与していることは論をもたない。細菌こそ歯周病の原因であると考えられがちである。ある特定の菌種をある疾患の原因菌であると判断する基準として、古くよりkochの原則が知られている。この原則は 外因感染で感染すると非常に高い確率で発症するような疾患を対象にしたものである。う蝕、歯周病も いくつかの菌種が発症に深く関与することが知られている。しかし、それらの菌種が存在していても、必ずしも発症するとは限らない。これは う蝕 歯周病が内因感染の性格を有していることを示している。そもそも最初は口腔内に存在していなかった菌種だから現来は外因感染だという考え方もあろうが、感染してすぐに発症するわけではなく、問題が生じてくるころにはすでに常在細菌叢の一部となり、宿主と常在細菌叢の亜間には平均状態保たれている。疾患が発症するのは 何らかの理由で宿主と常在細菌叢の間の平衡状態が乱れ、疾患に関与する菌種が増加した時である。

また近年では宿主と常在細菌叢は共存関係を保ちながら生活しているとするマイクロバイオームという概念が注目されている。この概念では宿主と常在細菌叢の調和が保たれている状態では健康が保たれているが、調和した平衡状態が乱れることによって種々の疾患が引き起こされていると考えている。