上顎前歯が前突した小児(7歳から11歳)に対する 早期矯正治療は有効か?

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本歯科矯正学会から出されている
「上顎前歯が突出した小児に対する 早期矯正治療に関する診療ガイドライン
」を読んでいます。

 

上顎前歯が前突した小児(7歳から11歳) に対する 早期矯正治療は有効か?

上顎前歯が前突した小児(7歳から11歳)に対し、 早期矯正治療を行わないことを強く推奨する。推奨に当たっての注意事項推奨を行うにあたり、下記条件を付帯する。 1)早期矯正治療を行っても、永久歯列期(12歳から16歳)に矯正治療が必要な場合は、 早期矯正治療を行わないことを推奨する。 2)早期矯正治療によって永久歯列期(12歳から16歳)の矯正治療が不要になると診断 された場合には、早期矯正治療を行うことを否定するものではない。 3)心理的な問題を強く有する場合や、舌、呼吸、咀嚼、発音などの機能的な問題が解 決可能と判断された場合には早期矯正治療を否定するものではない。 4)ただし早期矯正治療を行う場合は、そのコストと根拠、治療期間と予想される治療 結果を十分に説明し、永久歯列期の矯正治療が必要か否かの予測を示したうえで、 医療提供者の責任において行うべきである。 5)早期治療期間が2年以上にわたる場合には、早期治療の治療効果を検証し、治療方針 の変更を含め再検討すべきである。 6)外傷の軽減のためだけに早期治療を行うことは、推奨しない。
、日本における歯科界の現状を見ますと、歯科医師は10万人を超 え、全国の歯科診療所は68700軒を数えるまでになりました。これは全国 のコンビニエンスストアーを優に超える数です。そんな過当競争の中、一 般診療を行いながら歯科矯正治療をも手掛ける歯科診療所が増えているこ とは想像に難くありません。本来歯科矯正治療はその対象が小児から成人 までと幅が広く、また治療終了までに年単位の時間を要することに加え、 成長発育が治療に大きく関わる医療であることから、大学在学中の学生教 育の範疇では矯正治療に関わる知識、技術の完遂は難しく大学卒業後に一 定期間の修練が必須です。したがってそのような修練を受けず、一般診療 を行いながら歯科矯正治療を手掛ける先生には、日々の矯正臨床で疑問や 迷いが生ずる場合も少なくないと思われます。 インターネットの普及により情報は氾濫し、ますます正しい情報の峻別 が困難になっています。歯科矯正領域においても画一的な治療理念、治療 方針を謳うセミナーが開催され、実際そのようなスタディーグループも存 在します。矯正治療の開始時期に関しては「すべての症例においてできる だけ早期に治療を開始するほうがいい」というような独善的な考え方に基 づいての早期矯正治療のセミナーも散見されます。そのような現状を踏ま え、この診療ガイドラインが矯正治療を手がける先生方の指針となり、社 会に対する安心安全な歯科矯正治療の提供に繋がることを祈念いたします。